2025年大阪・関西万博に約30回通い、全パビリオンを回った筆者ですが、その中には最後まで理解を掴みきれなかった場所もあります。
その一つが、落合陽一氏プロデュースの「null²(ヌルヌル)」です。
初めて体験したときの感想は、率直に言えば「よく分からなかった」。
その後、家族と一緒にもう一度訪れましたが、やはり感想は大きく変わりませんでした。
これは、null²やそのコンセプトを否定する記事ではありません。
あくまで筆者個人の理解力や感性では、作品が伝えようとしていたものを十分に受け取れなかった、という実体験の記録です。
良かった、楽しかった、満足した――。
そんな感想を中心に書いたほかのパビリオンレビューとは少し違う、正直な振り返りとしてお読みください。
null²(ヌルヌル)とはどんなパビリオンだったのか
正式名称は「null²(ヌルヌル)」。
テーマ事業「シグネチャープロジェクト(いのちの輝きプロジェクト)」の一つで、「いのちを磨く」をテーマに掲げたパビリオンです。
プロデュースを担当したのはメディアアーティストの落合陽一氏。
建築デザインはNOIZが手がけました。
建物は、特殊な鏡面膜で構成された大小の立方体が集まった姿をしています。
内部のロボットアームによって変形しながら、周囲の風景をゆがめる「動く建築」です。
体験には専用アプリも使われます。
来場者が自分の情報を入力してから入館すると、自分のシルエットが、鏡のように機能するLEDモニター上にアバターとして現れます。
そのアバターはAIとの対話を通じて学習しながら、自律的に動く仕組みになっていました。
体験は、次の3部構成とされています。
- 対話モード
- 自分を外から見る観察ゾーン
- インスタレーションモード
その核となるのは、「死と再生を軽やかに実践する」というコンセプトです。
さらに、コンピューター用語で「値がない」ことを意味する「null」を、新しい価値が生まれる場として捉え直しています。
現実とデジタル、リアルとバーチャルの間にある新しい生命観を提案する――というのが、公式に説明されていた考え方です。
こうして文章にすると、筆者にはnull²が扱っていたテーマがかなり抽象的で、哲学的に感じられます。
1度目の体験は「よく分からなかった」
筆者が初めてnull²を体験したとき、正直なところ、その内容をうまく理解できませんでした。
自分のシルエットがアバターとして現れ、AIとの対話を通じて学習し、自律的に動いていく。
仕組みとして説明されれば理解できる部分はあります。
しかし、それが「いのちを磨く」というテーマや、「死と再生を軽やかに実践する」というコンセプトと、筆者の中ではうまく結びつきませんでした。
もちろん、作品から何を感じ取るかは人それぞれです。
すべてを言葉で説明できることだけが、体験の価値ではないとも思います。
それでも筆者の場合は、体験を終えたあとに何かが腑に落ちたという感覚には至らず、「結局、何だったのだろう」という戸惑いが残りました。
家族と再訪しても、やはりよく分からなかった
1度目だけでは掴めなかったのかもしれない。
そう考え、その後、家族と一緒にnull²を再訪しました。
初回とは違う受け止め方ができるかもしれませんし、2度目ならコンセプトと体験のつながりが見えてくる可能性もあります。
しかし、再訪後の筆者の感想も、やはり「よく分からなかった」でした。
2回体験しても、公式に示されたテーマや仕組みを、自分の中で納得できる形に整理することはできませんでした。
2度目でも、理解には至りませんでした。
約30回万博を訪れ、全パビリオンを体験した中でも、2度行ってなお感想がほとんど変わらなかったことは印象に残っています。
なぜ筆者にはピンとこなかったのか
ここからは、あくまで筆者個人の推測です。
null²は、分かりやすい物語を順番に追っていくタイプの体験ではなく、鏡やアバター、AIとの対話を通じて、現実とデジタル、生と死、自分と自分ではないものの間を考える作品だったのだと思います。
「null」という言葉についても、単に「値がない」という意味で終わらせず、そこから新しい価値が生まれる場として捉え直しています。
ただ、こうしたテーマは抽象度が高く、鑑賞する側にも、自分なりに意味を見いだすことが求められるように筆者には感じられました。
これは「null²は分かりにくい」と決めつけるものではありません。
筆者自身が、その抽象性を受け止め、作品と対話するところまで入り込めなかったという話です。
理解しようとして正解を探しすぎたことで、かえって自由に感じる余地を狭めてしまった可能性もあります。
よくある質問
- null²の正式な読み方は?
-
正式名称は「null²(ヌルヌル)」です。
- null²のテーマは何ですか?
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テーマ事業「シグネチャープロジェクト(いのちの輝きプロジェクト)」の一つで、テーマは「いのちを磨く」です。
- null²は誰がプロデュースしたのですか?
-
メディアアーティストの落合陽一氏がプロデュースしました。
建築デザインはNOIZが担当しています。 - どのような体験ができたのですか?
-
専用アプリに自分の情報を入力してから入館し、自分のシルエットがLEDモニター上にアバターとして表示されます。
アバターはAIとの対話を通じて学習しながら、自律的に動く仕組みです。
体験は「対話モード」「外から見る観察モード」「インスタレーションモード」の3部構成とされていました。 - この記事はnull²を批判するものですか?
-
いいえ。
筆者が2回体験しても、コンセプトを十分に掴みきれなかったという個人の感想です。
作品や落合陽一氏の考え方を否定する意図はなく、鑑賞する人によって受け止め方は異なると考えています。
2回行って分からなかったことも、万博の記録
2025年大阪・関西万博は、2025年10月13日に閉幕しました。
振り返ってみると、すべてのパビリオンを同じように理解し、同じように楽しめたわけではありません。
良かった体験もあれば、最後まで掴みきれなかった体験もあります。
null²についての筆者の結論は、2回行っても「正直、よく分からなかった」です。
ただし、それは作品に価値がないという意味ではありません。
「いのちを磨く」「死と再生」「現実とデジタルの間にある新しい生命観」というテーマや表現をどう感じるかは、人によって異なるでしょう。
全パビリオンを回ったからこそ、良かった話だけでなく、こうした率直な感想も残しておきたいと思います。
分からなかったことを、分かったように飾らない。
それもまた、万博を振り返る一つの方法ではないでしょうか。
なお、住友館など他のパビリオンの体験談は別記事でも紹介しています。


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